「最近の書誌図書関係文献」制作裏話(その4)

 こんにちは。「最近の書誌図書関係文献」ならびに『書誌年鑑』編者の、有木太一ありきふとしでございます。前回まで、書誌の採集をどのように行っているかお話ししてきましたが、こういう面倒臭いことをどうして私は続けているのでしょうか。今回はその辺の話を。

 近年デジタル化の進行により、『書誌年鑑』に限らず紙の本は、存在意義が問われるようになっているようです。そのような中、あえてアナログ的で地道な採録作業を続ける意義とは何でしょうか。

 デジタル化は、目先の数年から10年程度のスパンでは、出版業界に深刻な影響を及ぼすものです。すでに、紙ベースでは刊行されなくなった出版物が多数出ており、事業をやめてしまった出版社も多くあります。しかし、それより長いスパンで眺めてみると、紙の本が途絶えてしまうことはないだろうと確信できます。デジタルデータは、長期にわたるデータの保存が案外弱いことがわかってきました。永久保存を謳っていたハズのCDは、最近になって盤が劣化して再生できないトラブルがあちこちで生じています。実は、記録メディア全般が、時間の経過には抗えないのです。結局、オールドメディアとされる紙が最強ということになります。

 とはいえ、デジタル化による本の使われ方の変化、という側面も無視することはできません。特に大学図書館で顕著な傾向だそうですが、冊子体の文献目録(文献目録の本)は、利用頻度がとみに減っているということです。使い方を知らないのでしょう。ということは、大学教育の場でも教えていないということですね。『書誌年鑑』では、前付の部分に「この本の使い方」というページを設けていますが、そもそも手に取ってもらえないのではどうしようもありません。文献目録のような本は、いずれ出版できなくなってしまうのかもしれません。

 しかし、求める一冊に出会うためのインデックス情報は、依然必要です。紙の書籍から書誌を抽出するには、現物採録という手段が最も効率的であり、そして効果的だと思います。そうであるなら、書誌の作成は、引き続き同じ形で今後も続けられていくことがベストでしょう。というわけで、私は、書誌を過去から作り続けてきた先人の敷いたレールに乗って、多少の変更は加えつつも、今後も続けていくことが求められていると思っています。

 ご披露したい内容はとりあえず終わりです。またの機会をごひいきに。(有)

コメント

  1. 21gai 21gai より:

    有木さん、お忙しい中、当ブログに全4回のご寄稿、有り難うございました。

    世の中のレコード→CD、フィルムカメラ→デジタルカメラへの移行は激的でした。同様に書籍→電子書籍へ移行するのかと言えば、そう簡単ではないように思います。長期保存という観点では、有木さんのおっしゃる通り、紙の書籍に軍配が上がりそうです。しかし、紙の文献目録(書誌)についてはどうでしょう。

    昨今のボーンデジタル世代は、そもそも文献目録を引くという実体験が少ない気がします。取り敢えず、インターネットでググるというのがトレンディでしょうか。そうすると、求める一冊を探し出すためのインデックス情報は、従来の目録形式よりもデータベース形式の方が適切と言えるかもしれません。小社は元々インデックス情報を専門に取り扱う出版社ですので、フレキシブルな対応が可能…というのが強みですね。(竹)

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