『地方史文献年鑑2024』刊行記念 飯澤文夫さんインタビュー〈1〉

地方史に関心をもったのは…

 なにが起点になったかというと……ひとつ大きかったのは、1973年11月に、名著出版が「月刊歴史手帖」(以下「歴史手帖」【注1】)を創刊して、図書館に営業の方が売り込みに来たんですね。

 明治大学の図書館におりまして、たまたま居合わせたんですね。
見本誌をみて、おもしろそうだな、と思って、その時から個人的に定期購読を始めました。

 この雑誌は、地方史研究者のサロンにするんだ、ということで、地方史の研究投稿を載せる欄などもあって、日本史の雑誌のように見えて、地方史記事もたくさんありました。

 私は長野県辰野町の出身で、郷土意識、ふるさとへの思いがとても強かったんです。
少し横道にそれますが、長野県の戦後の教育は、信濃教育会というものがあって、先生たちが手作りで教科書を作っていました。

 社会科とか、理科とか、小学校の頃は先生の手作りの教科書を使っていて、すべて郷土のことから始めた。
 例えば、歴史は郷土の歴史から始めるし、理科は地域にある草花を知るところから始めていく、というように。

 いま考えると、とてもすばらしい教育だったと思います。
 だからかどうか、自然に郷土のことを意識するようになった気がします。

 故郷のことをいろいろ考えているときに、この「歴史手帖」を見て、日本史研究とは郷土史から始まる、と思うようになりました。

 日本史研究というのは、為政者、権力者の支配の歴史を研究するのだ、という人もおりますが ――平家がどうした、源氏がどうした、織田信長がとか ――その元は、地域で生きている人たちの歴史です。それが積み重なって日本の歴史になる。

 歴史研究というのは、郷土史こそが基本なんだ、という思いがあります。

明治大学博物館と『地方史文献年鑑』の縁~日本史研究は郷土史の研究から

 私は研究者でもなんでもないです。
大学でも日本史の勉強はしていませんし、私は、歴史は門外漢ですが、歴史とはそういうものではないかと思ったんです。

 であれば、全国で行われている郷土史、地方史研究、その成果をきちんと記録に残し、その人たちの成果を世に出すことが大事なことではないかと――ちょっと偉そうですが――そのように考えました。

 「歴史手帖」の巻末に載っている「地方史雑誌・文献目録」は、名著出版に届く雑誌を採録して記事にしていました。
 国会図書館に行って調べるとかではなくて、ですね。

 あるとき、「全国から送られてきている雑誌は、目録に採録したあと、どうしているんですか?」と聞いたら、欲しい社員が持って帰ったり、たくさん溜まってきたら処分する、と言われまして…。

 それは、すごくもったいないじゃないですか。

 きちんと保管すべきではないか、と考えて、勤務先だった明治大学図書館で話をしたんですが ――残念ながら力不足で理解してもらえませんでした。

 寄贈雑誌というのは、毎号確実に届くとは限らない、欠号になったらどうするんだ、そういうものは図書館では受け入れられない、という結論でした。

 当時、明治大学博物館に神崎さん【注2】という、のちに相模原の市立博物館の館長をするような方がおられました。
 優れた日本近世史の研究者でね、博物館の学芸員でした。

 この方に話をしたところ、「では博物館で引き取るよ」と言ってくださいました。

 博物館には、埋蔵文化財の報告書や、関連して自治体誌も寄贈されていることから、それプラス、雑誌を入れたら、“地方史文献センター”のような役割ができるね、という話をしてくださった。

 しかも博物館は、図書館と違って一般に公開している施設です。資料室もです。
大学図書館は外部の人が利用するには、それなりの手続きが必要ですが、博物館はだれでも自由に使える。
 広く活用してもらうには、博物館への収蔵は適していました。

 そんなわけで、寄贈された雑誌資料はすべて、博物館に収蔵してもらえることになりました。
この明治大学博物館【注3】と名著出版の橋渡しをした縁で、1979年7月から文献目録作りを、私が担当するようになったんですね。

〈2〉へ続く

後注:
【1】「月刊歴史手帖」
1973~1997年 名著出版から刊行されていた月刊誌。
この中に「地方史雑誌・文献目録」が掲載されており、のちに飯澤氏が担当するようになる。

【2】神崎 彰利
1930年、神奈川県生れ。
明治大学博物館学芸員、のちに相模原市博物館の初代館長。

【3】明治大学博物館 図書室
https://www.meiji.ac.jp/museum/guidance/info_lib.html
サイトより:
博物館図書室では、刑事・商品・考古の3部門に関連する約13万冊の図書・雑誌を閲覧できます。利用料は無料で、明治大学の学生・教職員・校友・博物館友の会会員のほか、一般の方もご利用いただけます(紹介状等も不要です)

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