オンデマンド出版『地域別図書目録』

 営業局の(竹)です。2024年1月発売開始のオンデマンド出版『地域別図書目録』をご紹介します。原則、ストック(在庫)を持たず受注後に製本するオンデマンド出版のため、ISBNがなく取次書店ルートを通らず、弊社(直販)もしくは代理店・書店(直卸)経由で入手する形となります。

 全国を10ブロック(北海道|東北|関東|東京|北陸・甲信越|東海|近畿|中国|四国|九州・沖縄)に分けての分冊刊行・分売可です。編者は野口武悟のぐちたけのり教授(専修大学文学部)で、序文に先生の企画意図が明確に表されています。

 本書は、戦後(1945年以降)の資料に絞り、“地域・郷土資料の全国書誌”に相当するツールを目指しました。野口先生によると、地域・郷土資料は、以下の4タイプに分けられます。

  1. 郷土資料
    • 江戸時代以前の文書も含まれ、博物館や文書館で収集・保存・提供する場合も。
  2. 地方行政資料
    • 地域の住民向けに周知・広報するための資料や議会の議事録など。各自治体の議会図書室や文書館が専門的に扱う。
  3. 地域内刊行資料
    • 地域内の団体(農協・漁協、商工会・商工会議所、学校)や個人の刊行したもの。
  4. 地域関係資料
    • 書き手が地域住民であったり、その地域が舞台のノンフィクションからフィクションまで、多岐にわたる。商業出版物として市場流通しているものが多い。

 4.については、日外アソシエーツと、親会社の図書館流通センターの巨大な図書データベースを駆使して、地名や地域ゆかりの件名などでデータ抽出し、地域ごとに分類・整理しました。弊社のいつもの目録作りの手法です。

 本書のセールスポイントは、市場流通しておらず、国立国会図書館未納本の資料、すなわち、その地域の図書館ならではのオリジナル資料の情報を収集し、整理しようと試みたことです。そのために2023年7~9月にかけてアンケート送信フォームを設置して、日外アソシエーツのホームぺージから全国の都道府県立図書館および主要市立図書館に協力をお願いしました。

 尤も、図書館が所蔵する地域・郷土資料の全てを網羅するのは非現実的ですので、地域・郷土資料担当の司書がお勧めする(イチオシの)資料の書誌情報(10点程)と、それらに関する100~200字程度の解説を募集しました。ご協力いただいた自治体・図書館名は、許諾を得られた場合、巻末に記載してあります。また、回答内容は、本書以外にも野口先生の今後の研究発表等を通して公表されることがあるそうです。

 実際に「北陸・甲信越」編から「福井県」の事例を見てみましょう。個人的に「福井地震」に関する文献にどんなものがあるか調べてみました。1948(昭和23)年6月28日、福井平野の浅い所で大地震が発生、マグニチュードは7.1、当時最大の震度6を観測しました。本震の直後にマグニチュード5.8の大きな余震が発生し、その後、3週間にわたり余震が発生する日々が続きました。福井県の被害は、全壊35,382戸、死者3,728人。大地震直後に火災が広がり被害が拡大、市街地ではほとんどが焼失したところもありました。「地名・事項名索引」を引くと、「福井地震(1948)」という項目がありました。

福井地震(1948)
 福井県 26642, 28752, 28832, 28833, 28840, 28900, 28905~28909, 28914, 28937, 29246~29248, 30526
 〈地名・事項名索引より抜粋

 本文は、先ず都道府県ごとに分けて、冒頭に図書館司書アンケートに基づく「イチオシ地域研究・郷土資料」を掲載。続いてNDCに沿って分類し、分類見出しの下は書名の五十音順に並べて文献番号(通し番号)を振っています。「索引」に記された文献番号から目的の文献を辿ります。以下、本文の抜粋です。

26642 温故叢談 8 私達の戦争体験ならびに福井大地震体験記録特集号 村の歴史懇話会編 福井 村の歴史懇話会事務局 2012.4 72p 26cm (N)214.4

28752 お天守がとんだ―丸岡町・福井大震災追想誌 丸岡町震災記念誌編纂委員会編 丸岡町(福井県) 丸岡町 2000.4 194p 25cm(N)369.31

28905 福井震災語り継ぐわが町の記録―苦難乗り越え五十年 春江町震災記念誌編纂委員会編 春江町(福井県) 春江町震災記念誌編纂委員会 1999.6 558p 図版28枚 27cm (N)369.31

28906 福井震災誌 福井県編 福井 福井県 1949 2冊(附録トモ) 22cm (N)369.31

28909 福井震災70年―記録と記憶を未来へつなぐ:特別展 福井県立歴史博物館編 福井 福井県立歴史博物館
 2018.6 113p 30cm 〈書誌注記:年表あり, 書誌注記:文献あり, 一般注記:会期:平成30年6月28日―8月19日〉(N)369.31

28914 不死鳥の羽音―福井震災50周年記念誌 [福井]福井震災50周年記念事業「世界震災都市会議」開催実行委員会 1998.3 208p 28cm 〈他言語標題:A phoenix arisen, 部分タイトル:A phoenix arisen, 一般注記:英文併記〉 (N)369.31

28937 1948福井地震報告書 [東京] 中央防災会議災害教訓の継承に関する専門調査会 2011.3 247p 図版12p 30cm 〈文献あり〉 (N)369.31

29248 昭和23年6月28日福井地震調査概報 [東京] 中央気象台 1949 89p 図版 26cm 〈一般注記:験震時報 第14巻別冊〉 (N)453.2

30526 伝えよう福井震災の記憶―東十郷 東十郷まちづくり協議会編 坂井 東十郷まちづくり協議会 2019.3 124p 30cm (N)916
 〈本文より順次抜粋〉

 ここまでは普通の図書目録と同じですが、ここで「福井県」冒頭の「イチオシ地域研究・郷土資料」を見ると、地元図書館司書提供の有力な情報が得られます。以下、データベースでは簡単に検索できない貴重な文献情報(抜粋)も載っていることがあります。まずは、各都道府県の冒頭の解説とイチオシ文献をご覧ください。

〈解説〉
 福井県の広く災害一般について調べる際の資料を紹介します。消防や気象庁など、編者によって、特色ある資料となっているため、比較しながらの調査が必要となります。主な災害が年代順に年表になっているものや、洪水、地震など、災害ごとに年表になっているもののほか、災害にまつわる伝説を取り上げている資料もあります。

〈文献〉
26183 語り継ぐ災害の記録 著編者:福井県消防長会広報分科会事務局 福井県消防長会 2001.9 194p

26190 昔からの福井の地震 著編者:上杉喜寿 [福井県教科書供給所] 1996.1.30 218p
 〈イチオシ地域研究・郷土資料より順次抜粋〉

 何でもインターネットで簡単に調べられる昨今、地域・郷土資料のデジタルアーカイブに取り組む図書館も増えています。が、地域の図書館へ行かなければ調べられない、入手できない紙ベースの資料もまだまだ存在するのも事実。新たな地域・郷土資料との出会いを促し、地域研究に寄与すること、本書の刊行意義はまさにそこにある、と野口先生もおっしゃっています。(竹)

地域別図書目録

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