営業の青木です。
今月「韓国国立図書館 司書部日誌1948」が発売となりました。
本書刊行の意義について、「司書部日誌」翻訳刊行委員会の飯澤文夫さんが「はじめに」の中で書いて下さっていますので、ご紹介いたします
。
韓国の近現代図書館は、日本植民地期、アメリカ軍政期、政府樹立期、朝鮮戦争期という複雑な統治、政治状況に翻弄された歴史を経て今日に至っている。その混乱により資料が散逸したこともあり、図書館史研究はあまり進んでいなかった。それが2020年に、朝鮮総督府図書館時代の1931年から1961年までの国立図書館時代に至る、30年間に及ぶ公文書87件が一綴りになって、ネットオークションに出現した。天祐というほかはない。
幸いにも公文書綴は韓国図書館史研究会の手に渡り、同会は直ちに検証し、発見の意味や解放前後の国立図書館の状況ほかの解説を付して2021年に緊急出版した。中核をなすのは「司書部日誌」である。目録(和韓書、洋書)、古典籍、サービス、収書の各部署における1948年一年間の業務実態が克明に記され、解放後、模索しながら自力で図書館を構築し、国民のためのサービスに邁進、努力する職員の姿が浮かび上がってくる。大変に貴重な記録である。なお、同綴は現在、1963年に名称を改めた国立中央図書館に収蔵されている。

日本近現代図書館史研究においても、同時代の韓国の図書館を切り離して考えることはできない。しかし、これまで韓国に有力な資料や文献が多くなかったことから、関係性を論ずることは困難であった。本書はその空白を埋めるものとして期待される。しかも業務日誌という生資料により、現場職員の業務実態を前面に出して編集された図書館史は例をみない。この方法論も、図書館史編さん、図書館文化史研究に一石を投じるものである。
翻訳出版に当たっては、専門家による論考を加えた。日本植民地期の図書館の性格と活動を考察した、新藤透「「前史」としての朝鮮総督府図書館」と、朝鮮総督府図書館時代から勤務し解放後に館長職に就いた韓国近現代史のキーマン李在郁に光を当てた、千錫烈「韓国図書館界における李在郁の活動と生涯―朝鮮総督府図書館と国立図書館における実践を中心に」である。これにより、原書に一層の付加価値を与え、資料と研究書の両面を兼ね備えるものになった。
公共・大学図書館員と図書館情報学研究者はもとより、韓国近現代史研究者、司書資格取得を目指す学生諸君にも是非目を向けて欲しいと願っている。
翻訳者の田中亮氏は、宮城県教育委員会に所属する現役の図書館司書である。かねて韓国の書物や図書館に関心を寄せていたことから、いち早く原書に着目し、並々ならぬ思いで翻訳を進めてきた。同氏の熱意なくしてこの出版はなかった。その労に感謝を捧げたい。
翻訳出版を快く承諾くださった韓国国立中央図書館、韓国図書館史研究会および原書執筆者各位、原著出版社図研文庫、同社との仲介の労をおとりいただいた出版社クオン(東京都千代田区)の金承福氏に心より御礼申し上げる次第である。
本書の出版により、日韓両国の図書館に理解と交流が深まることを願って已まない。
「司書部日誌」翻訳刊行委員会 飯澤文夫
飯澤 文夫
1949年長野県辰野町出身。元明治大学図書館勤務。元帝京大学准教授。
共著に「図書館から公共性を考える」(藤江昌嗣編著『場、建物、空間から公共性を考える』学文社, 2023)、編集に『地方史文献年鑑1997-2024』(岩田書院/白鳥舎/日外アソシエーツ, 1999-2025)、監修に『郷土ゆかりの人々ー地方史誌にとりあげられた人物文献目録』(日外アソシエーツ, 2016)などがある。
「韓国国立図書館 司書部日誌1948」
韓国図書館史研究会/「司書部日誌」翻訳刊行委員会〔編〕、田中亮〔訳〕
B5・470p 2026.7 日外アソシエーツ刊
定価22,000円(本体20,000円+税10%)
ISBN:978-4-8169-3113-0
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