2025年12月、日外アソシエーツから『地方史文献年鑑2024』が刊行されました。『地方史文献年鑑』は、1997年版~2023年版まで岩田書院、白鳥舎から刊行されていた、長い歴史のある文献年鑑です。
縁あって、2024年版より日外アソシエーツが編集・刊行を担当することになりました。これを記念して、1997年版以来、長年編者を務められてきた飯澤文夫さんに、地方史への思いなど、お話を聞かせていただきました。(DB編集部・K)

本もデータベースも~『地方史文献年鑑』とMagazinePlus

――飯澤さんには今回の編集期間にMagazinePlusを使っていただきましたが、書籍とデータベース【注8】、使い比べてみていかがでしたか。
『年鑑』制作のためにMagazinePlusをたくさん使わせていただきましたが、すごくいいですね。ひとつの記事にいろいろなタグが付いていて、汎用性が高い。検索性にも優れています。
データベースのいいところは、検索ですね。
固有名詞や地名などで候補がたくさん出てくるし、特定の文献に容易に行きつくことができる。
『地方史文献年鑑』(書籍)はそういう意味では、使い勝手がね …… 年ごとに分かれているし、なにより、重いですし(笑)
それと、データベースに集積したデータから、発展形を作ることができるのもいいですね。MagazinePlusでデータを扱ってもらうことで、これまでにいろいろな本【注9】ができています。ほかの形に加工できる、というのが、データベースのいいところだと思います。
――2024年版から日外アソシエーツに移って、MagazinePlusの支援で『地方史文献年鑑』を
制作したご感想はいかがでしょう。
岩田書院・白鳥舎時代も、『年鑑』をつくるたびに、今年はたくさん集めたな、という達成感がありましたが、MagazinePlusから採録した雑誌があまりにも多く、しかも未知なものばかりで、なんというか、打ち砕かれました(笑)『地方史文献年鑑2024』では、前版から200誌以上も収録雑誌が増えましたからね。
いままでのやり方では、まだまだ足りていなかった。データ集ですからね。数はたくさんあった方がいい。
『地方史文献年鑑』は入口~地方史研究の世界へようこそ
――『地方史文献年鑑』は出すことに意義があるような気がします。飯澤さんはどのようにお考えですか。
営業的には申し訳ないんですけど……(笑)『地方史文献年鑑』を出し続けることに意義がある、ということを汲んでいただけるところじゃないとダメなんですよ。
『歴史手帖』時代からずっと、「地方史情報」なり、『年鑑』なりに掲載すると、とても喜んで連絡を下さる団体が、いくつもあります。ほそぼそとした活動を取り上げてもらえてうれしかった、励みになる、というようなね。そういった方々に、活動を続けてもらうためにも、私たちも続けていかなくてはならない。これは岩田さんも強く思っていたんじゃないでしょうかね。
「地方史情報」は、日外さんに移行してから、それまでのように文献データを記述するのではなく、表紙、目次、奥付をPDFで公開する形に変えました。
あらかじめ、寄贈してくれる研究団体や機関に掲載の許諾をとったのですが、ある機関から、薄い雑誌なのでそもそも目次がないと言われました。
それなら表紙に目次をつけたらどうですかと、いくつかの例を送ったところ、それまでの表紙は全面をその土地のきれいな写真で飾っていたのですが、それを損なわないようなデザインで目次が入るようになりました。うれしかったですね。
そんな双方向の関係をこれからも結んでいきたいと思っています。
――名著出版の『歴史手帖』は、地方史研究者のサロンとして、というようなことをうたっていましたが、そのようになれたらいいですね。
実現はしませんでしたが……『歴史手帖』という雑誌そのものが在野のひとたちがいろんな情報を寄せ合って、そこからまたテーマを引き出して、というような意味で誌面がひとつのサロン、という、そういうイメージがあったと思います。
それと、明治大学博物館を地方史文献センターのようにして、そこに行けば雑誌も、報告書も自治体誌もあって、かつ、研究者がそこに集まって、自由にディスカッションや情報交換をできる場所になったらいいね、というようなことを神崎さん【注2】がよくおっしゃっていた。そういうような場があって、“雑談をする”のが大事なんだと思います。
…物理的にそういうものを作るのは難しいでしょうけど、郷土史の雑誌だと、地域のお祭の情報とかね、雑報欄がそういう役割ですよね。
――最後になりますが、『地方史文献年鑑』をどのように使ってほしいですか。
『年鑑』の最大の弱点は、テーマや著者名などで検索ができず、文献にダイレクトに行き着けないことです。
では、なにが強みかといえば、全体を俯瞰することができること。
図書館の利用に則していえば、オンライン目録やDBがピンポイントで特定文献を容易に探せるのに対して、『年鑑』は、時間はかかりますが、考えながらパラパラとページを繰ることで ――つまりそれは、書庫の中を歩き回って(ブラウジングして) ――蔵書全体を見回し、必要なものと、関連するものを発見するのと同じ楽しみがある、といえるのではないでしょうか。
それによって見えてくるものは、研究と地域の動向、傾向です。
例えば、長野県内ではどのような研究団体が活動し、どのようなテーマに関心が向けられているか、というようなことです。
使ってもらいたい人は、研究者はもちろんですが、自分の暮らす地域のことを知りたいと思っている人、これから研究や学びを進めて行こうとする若い人、学生さんです。
『地方史文献年鑑』は入口です。目録だけでは完結しない。できるだけ現物を手に取ってほしい。そのために、入手の便を考えて発行元の情報と、分かる限り、雑誌の所蔵先を明記しました。
新しい発見、テーマ、関心を探してください。
【了】
後注:
【8】MagazinePlusの地方史文献年鑑データ
岩田書院・白鳥舎から提供を受け、1997年版以降すべての『地方史文献年鑑』データを搭載。2024年版からは自社データとして地方史研究誌のデータ蓄積を行っている。
【9】『地方史文献年鑑』データからの発展形
1997年以来の『地方史文献年鑑』データを使って日外アソシエーツが制作した書誌に
『郷土ゆかりの人々―地方史誌にとりあげられた人物文献目録』(2016)
『地名でたどる郷土の歴史―地方史誌にとりあげられた地名文献目録』(2017)
『郷土に伝わる民俗と信仰―地方史誌にとりあげられた民俗文献目録』(2018)
がある。いずれも飯澤文夫監修。


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