「街と猫と図書館と」(オラシオさん連載 Vol.1)

日外アソシエーツ図書館ウォーカー―旅のついでに図書館へ」(2023.1刊)、
そして続編の「図書館ウォーカー2―旅のついでに図書館へ」(2024.5刊) 
著者のオラシオさんによる、月1回のスペシャル連載コラム、ぜひご覧ください。

 図書館ウォーカーとしての僕の旅は基本的に「図書館がある街を歩く」ことを目的としています。図書館を拠点に旅先の街を散策し「ならでは」の風景やご当地グルメなどを楽しみつつ、その土地の日常生活に思いを馳せるというものです。そしてその次に、いや同じくらいの重要度なのが「猫に出会う」です。僕は幼少の頃から動物にまったく心を動かされない冷血低体温人間でしたが、大人になると変化が現れ、猫だけはかわいいと思うようになりました。

 街のありようと猫の存在は無関係ではない気もしています。とあるトークイベント出演時に締めの代わりとして恒例の「旅先で撮った猫写真連続見せ」をやっていたら、客席のお客様から「猫が安心して暮らせる街はいい街だといいますね」とお声がけをいただき、なるほどなと思いました。以来その「説」を使わせていただくことにしました。旅では基本的に図書館と住環境が良い街なら「いい街=移住先候補」と認定していますが、さらに猫に会えると好印象爆上がりです。

鹿児島県・与論島の民宿で出会った猫
鹿児島県・与論島の民宿で出会った猫

 また、図書館と猫の共通点もあると思います。図書館の楽しみ方・評価軸は例えばどんな本を所蔵しているか、建物や内装のデザイン、書架のレイアウトやサインのあり方などなど様々です。それは旅行者でもパッと見てわかる「ヴィジュアル」な部分ですが、図書館の本来の価値はレファレンス・サービスや地元の文化・歴史の継承や啓蒙のためのあれこれなど、住民が継続的に利用していく中でようやくその良し悪しがわかってくるものではないでしょうか。その館がある街の環境やコミュニティと切り離しては全体像が見えてこないのが、図書館という公共施設の特徴だと僕は考えています。

沖縄県立図書館。郷土資料の充実ぶりに圧倒される。ここに限らず沖縄県内の図書館はどんな規模の館でも郷土資料の割合が他県より高い
沖縄県立図書館。郷土資料の充実ぶりに圧倒される。
ここに限らず沖縄県内の図書館はどんな規模の館でも郷土資料の割合が他県より高い

 同様に猫も、パッと見の「ヴィジュアル」は確かにかわいい。でもその猫の個性はその時点ではきちんと捉えきれていません。しかし飼い主の方の「いつもは家から出ないんだけどねえ」とか「この子だけオスだからみんなに怖がられてるんですよ」という言葉を聞くと少しずつ何かが見えてきます。猫が数匹いれば、その街への滞在期間・回数が増えるほどそれぞれのキャラや地元の人との関係性もわかってきますし。

 猫の写真を撮るのが大好きなのですが、ひさしぶりに猫のいた街を再訪すると猫が大人になってすっかり警戒能力が上がりなかなか撮らせてくれなくなったり、僕にはそっけないのに近所の方に猛烈に甘えたりしているのを見てジェラシーをおぼえたりなどもご愛敬。図書館も猫も、その街やコミュニティとセットで捉えることで、より深く楽しめるのではないでしょうか。

メス猫たちに恐れられている緑一点猫のカブキくん。北海道の豊富町にて
メス猫たちに恐れられている緑一点猫のカブキくん。北海道の豊富町にて

(オラシオ)

【著者略歴】オラシオ
ライター、エッセイスト。大阪育ち青森市在住。
2019年11月から陸奥新報で「図書館ウォーカー」を連載中。旅先で訪ねた図書館は550館以上。公共図書館員として8年間勤務経験あり。著書に「図書館ウォーカー―旅のついでに図書館へ」(2023)。「図書館ウォーカー2―旅のついでに図書館へ」(2024)。音楽の分野ではコンピレーションCD「ポーランド・ピアニズム」「ポーランド・リリシズム」(CORE PORT)選曲解説の他、ライナー執筆など多数。
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