日外アソシエーツ「図書館ウォーカー―旅のついでに図書館へ」(2023.1刊)、
そして続編の「図書館ウォーカー2―旅のついでに図書館へ」(2024.5刊)
著者のオラシオさんによる、月1回のスペシャル連載コラム、お楽しみください。
図書館ウォーカーとして全国の街を旅するようになって、良いことがありました。お仕事で関わる方たちは、ほとんどが東京にお住まい・ご勤務でもご出身は違う人が多いです。なので初対面時にみなさんが生まれ育った都道府県や街(&図書館)に行ったことがある、と申し上げると話が弾むんです。僕は公民館図書室的な小さな図書館的施設にも足を運ぶので、中には「あそこに図書室があるのを知らなかった」と驚かれることも。
そんなふうに弾む話の中で僕がつい安易に使ってしまうのが「立派な図書館・いい図書館」という言葉です。特に前者はその街を知っている人からすると「そんなに立派でしたっけ?」と首をかしげられることも多く、またそこを知らない人には「そんなに大きな図書館があるんだ」という勘違いをさせてしまったり。

コンビニなどが目につくところにあります。こちらは北海道せたな町の中心部、北檜山
僕の図書館観は「図書館とそれが建つ街をセットで考える」というものです。なので旅先の図書館の評価には必ずその街の規模や環境などの条件が加わっています。例えば「人口3千人の街にしてはずいぶん」という言葉が()で隠れた「立派な図書館」だとイメージが少し変わってきますよね。ではなぜそのように図書館を見るのか。
理由の一つは「この街に住むとしたら」という移住者の視点で見ているからです。僕は運転免許を持っていませんし、この先も取得するつもりはありません。今のところは比較的公共交通が整備されている青森市在住ですが、もしまたどこかに移住するとすれば、年齢も考えるともう少し規模の小さな、生活に必要なあれこれが徒歩圏内にある程度揃っている街になるのではと思っています。そういう街のことを、勝手にコンパクトシティならぬ「コンパクトタウン」と呼んでいます。

岩手県大船渡市のJR・三陸鉄道「盛」駅近くにあるご当地スーパー「サンリア」
そのコンパクトタウンにきれいで居心地よく、多くはないもののそれなりに新着本を入れたりちょこちょこ企画展示やイベントをするような図書館があったら。新しい土地で人生が終わるまでの、おそらく想像より長くも短くもない時間を充実した気持ちで過ごせるのでは。そんな夢想を胸に抱きつつ、次の移住先候補を探して図書館ウォーカーは今日もまた「図書館がある街を歩く」旅に出かけます。
小さな街にある小さな図書館を数多く見てきて感じるのは「館内でのんびり過ごせるかどうか」がとても大事ということです。なぜかと言うと、小さな街であればあるほどいわゆる「サードプレイス」が少ないからです。所蔵資料が充実していても、面積のほとんどを書架が占めていて閲覧席(ただのパイプ椅子とかではなく、時には窓の外に目をやりながらゆっくり読書できるような)がほぼないとか人が通るくらいのスペースしかないとかだと、もし自分がその街の住民なら本を借りるか返しに行くだけの場所になってしまう気がします。

こちらは青森市の某所。桜の季節によく歩いています
念のため書いておきますと、そういうところが良くない図書館だと言いたいわけではありません。僕は家の中であまり仕事ができないので(この原稿も青森市内のカフェで書いています)、死ぬまで物書きをやっているだろう自分にとって再移住先の図書館が仕事できる空間だといいなあ、という個人的な事情もあります。
さて今回はこの辺で。次回は独断と偏見で選んだコンパクトタウンにおける「立派な図書館」の実例をご紹介したいと思います。
(オラシオ)
【著者略歴】オラシオ
ライター、エッセイスト。大阪育ち青森市在住。
2019年11月から陸奥新報で「図書館ウォーカー」を連載中。旅先で訪ねた図書館は550館以上。公共図書館員として8年間勤務経験あり。著書に「図書館ウォーカー―旅のついでに図書館へ」(2023)。「図書館ウォーカー2―旅のついでに図書館へ」(2024)。音楽の分野ではコンピレーションCD「ポーランド・ピアニズム」「ポーランド・リリシズム」(CORE PORT)選曲解説の他、ライナー執筆など多数。
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