日外アソシエーツ「図書館ウォーカー―旅のついでに図書館へ」(2023.1刊)、
そして続編の「図書館ウォーカー2―旅のついでに図書館へ」(2024.5刊)
著者のオラシオさんによる、月1回のスペシャル連載コラム、お楽しみください。
前回は青森市の例を挙げましたが、徒歩10分くらいで図書館と温泉をハシゴできる街は全国にちらほらあります。それどころか、究極的形態とも言える「温泉併設」の図書館というのも存在するのです。まあさすがに数少ないのですが。例を挙げると、北海道むかわ町のまなびランド図書室(道の駅やホテルまで併設!)、東京都青梅市の中央図書館、山形県小国町のおぐに開発総合センター図書室などでしょうか。これらの図書館では温泉から図書館へ建物の外へ出ることなくハシゴできます。いずれサウナ併設の図書館なんてのも誕生しそうですね。

そういう個性的な館は確かに面白いのですが、一つ難点もあります。外に出ないで楽しく過ごせてしまうため、だらだらしてついつい街歩きがおろそかになってしまう。「図書館のある街を散策する」が醍醐味の図書館ウォーカーにとっては鬼門です。準備段階で地図を眺めていてもどうしても関心が温泉図書館に寄ってしまい、街歩きの妄想がふくらみにくかったりも。やはり上限徒歩10分くらいの距離に温泉と図書館があるくらいのほうが下準備でも実際に歩く時でも、その街の日常生活のイメージがしやすい気がします。
日本は温泉大国なので全国いたる所に「温泉郷」的なエリアがありますが、それらの多くは観光客に向けて整備されています。一方で図書館は住宅街など日常に寄りそう立地であることが多い。なので有名な温泉郷だからと言ってそこに図書館が建っている可能性が高いかと言うとそんなことはないんです。例えば登別温泉などは市街地から離れた場所にあるので、図書館はありません(そもそも登別市の中心部は登別駅前ではなく2つ隣の駅の幌別周辺です)。だからこそ温泉とハシゴできる図書館が貴重で楽しいとも言えます。

実際に僕がハシゴした中からいくつかご紹介します。映画「図書館戦争」のロケ地としても有名な新潟県十日町市の十日町情報館は近くに道の駅や美術館併設の温泉があります。ちなみに同館は館内の美麗デザインがよく知られていますが外観はけっこう無骨なので、個人的にはそのギャップが魅力だと思っています。険しい山間に築かれた長野県天龍村はメイン駅の平岡(JR飯田線)が駅舎にホテルと温泉併設で、そのすぐ近くに図書館ありの文化センター「なんでも館」が建っています。ただし両者を結ぶ道は「激坂」なので行き来には体力が必要です。
大分県中津市の観光地と言えば耶馬渓が有名ですが、そのさらに奥地に山国という地区があります。とても趣きのある小さな集落の中に「コアやまくに」という複合施設群が建っていて、エリア内には図書館併設かつ展望塔つき近未来的デザイン?のメイン施設や温泉、コテージなどがあってすさまじい充実ぶり。なんなんだここは。しばらく暮らしてみたい街の一つですね。

また行く理由ができました
最後に宣伝のようでいてズバリ宣伝で恐縮ですが、拙著「図書館ウォーカー」シリーズにも「温泉のあとは図書館へ」になっているエピソードがけっこう含まれています。すべてをここに挙げるとかなり字数を食うので、やはりそこはお手元においてじっくり確かめていただくのが良いかと。みなさんも旅先で温泉と図書館をハシゴしてみてください。心身ともに充実した旅になること請け合いです。
(オラシオ)
【著者略歴】オラシオ
ライター、エッセイスト。大阪育ち青森市在住。
2019年11月から陸奥新報で「図書館ウォーカー」を連載中。旅先で訪ねた図書館は550館以上。公共図書館員として8年間勤務経験あり。著書に「図書館ウォーカー―旅のついでに図書館へ」(2023)。「図書館ウォーカー2―旅のついでに図書館へ」(2024)。音楽の分野ではコンピレーションCD「ポーランド・ピアニズム」「ポーランド・リリシズム」(CORE PORT)選曲解説の他、ライナー執筆など多数。
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