日外アソシエーツ「図書館ウォーカー―旅のついでに図書館へ」(2023.1刊)と、続編の「図書館ウォーカー2―旅のついでに図書館へ」(2024.5刊) の著者オラシオさんによる、月1回のスペシャル連載コラムです。
東京都民だったその昔、仲の良かった某図書館員が「自治体の中のどこに住んでいても徒歩10分くらいの場所に図書館が建っているっていうのが理想だよね」と言っていました。今考えれば「それじゃコンビニ並みじゃん(笑)」と思ったりもするのですが、その言葉を聞いた時は深く考えもせず「ふむふむなるほどねえ」などと納得していました。
そんな記憶があるからなのかどうなのか、全国を旅していて(特に寂れていく一方だと都会の人に勝手にイメージされている)地方の小さな街で、どこに住んでいても徒歩10分というわけにはいかないにしても、図書館を含めた「本がある空間」がいくつも集まっているエリアを見つけると「いいねえ」と一人で喜んだりしています。
例えば秋田県北秋田市の秋田内陸縦貫鉄道阿仁合駅周辺エリア。駅から徒歩10分ほどの小高い丘の上に建つ公民館内の小さな図書室、駅前には北欧の家屋のような外観が印象的な無人書店兼貸本屋、そして阿仁合駅舎の2階待合室にも本が自由に読める書架があります。2時間もあればおそらくほとんどすべての道を歩ききってしまえるような小さな集落の中に3つもブックスポットがあって感動ものです。

しかし近年見た中でいちばん「アツい」と感じたのは北海道苫小牧市の沼ノ端地区です。JR室蘭本線・千歳線の沼ノ端駅周辺に展開しているエリアで、通勤通学の時間帯にはたくさんの人が列車に乗り込んでくるベッドタウンです。僕は旅のプラン作成中に下りる予定の駅、宿泊予定の宿の近くに図書館があるかどうか調べるようにしているのですが、ある時沼ノ端駅エリアを調べていてびっくり。

なんとこの街には駅から徒歩10分前後の距離内に3つも図書館的施設があるのです。街は沼ノ端駅を境に南北で雰囲気が大きく違います。南側はどことなく庶民的なムードの古くからの住宅地、北側は大型スーパーなどが点在し交通量の多い幹線道路も走る新興住宅地。 1番近いのは駅南口から徒歩6分の沼ノ端コミュニティセンター内にある図書室。ここはおそらくみなさんがイメージする旧来の「図書館分室」的なところで、体育館を併設しているからか子どもの出入りも多くてとても庶民的な印象。

同じく南口側の、駅から徒歩15分くらいの場所には2022年開館の新しい複合施設「東開文化交流サロン」。きれいでのびのび過ごせる開放的な図書室、パフェ佐藤が監修したデザートも食べられるカフェも併設され、まさに「こんな施設が近所にあったらいいな」のロールモデルかと。
駅北側には徒歩10分程度の場所に児童センターや市役所出張所を併設した沼ノ端交流センター。こちらは「トピリカ」という愛称があります。施設中央の多目的ホールの端っこにこぢんまりと書架が並べられた図書コーナーが。中高生くらいの子どもたちがたくさん利用していました。

というわけでこの沼ノ端、前回、前々回で書いた「良い図書館があるコンパクトタウン」の好例の一つでもあります。バスですぐ近くまで行ける中央図書館(拙著「図書館ウォーカー」の1でご紹介)も素晴らしい館ですし、日替わりで違う図書館を使い分けたいという欲張りな方(?)にはぴったりの街だと思いますよ。
(オラシオ)
【著者略歴】オラシオ
ライター、エッセイスト。大阪育ち青森市在住。
2019年11月から陸奥新報で「図書館ウォーカー」を連載中。旅先で訪ねた図書館は550館以上。公共図書館員として8年間勤務経験あり。著書に「図書館ウォーカー―旅のついでに図書館へ」(2023)。「図書館ウォーカー2―旅のついでに図書館へ」(2024)。音楽の分野ではコンピレーションCD「ポーランド・ピアニズム」「ポーランド・リリシズム」(CORE PORT)選曲解説の他、ライナー執筆など多数。
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「図書館ウォーカー—旅のついでに図書館へ」
オラシオ〔著〕
A5・230p 2023.1 日外アソシエーツ刊
定価2,530円(本体2,300円+税10%)
ISBN:978-4-8169-2952-6
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「図書館ウォーカー2—旅のついでに図書館へ」
オラシオ〔著〕
A5・220p 2024.5 日外アソシエーツ刊
定価2,530円(本体2,300円+税10%)
ISBN:978-4-8169-3008-9
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